306日目 今考えること

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1.

「本当に終わってしまったんだなあ…」

あと2時間もすればこのヒューストンを出ます。

 

初めは馴染めなかったこの街も今となっては故郷の一つのよう。

10か月も過ごして、考え方も、文化も生活も、アメリカに染まった今、「日本に帰る」のではなく、「"日本”という国に行く」という感覚になりました。そしてこれから行く“日本という国” はどうやら素晴らしい国だそうです。街は綺麗で、安全で、夢や家族のために懸命に働くひとたちがいっぱいいる…、そんな素敵な国。周りの人がそう言っていました。これからそんな国に向かいます。今はとっても寂しいけれど、新天地であるその“日本” でまた新たな夢を追いたいと思います。

 

思い返せば、この10か月いろんなことがありました。たかだか10か月、されど10か月。僕にとっては長くもあり、短くもありました。これまでの22年間と全く違う環境で過ごしたことから時間の感覚も何だか不思議です。2年も3年もいたような感覚だけれども、経過したのは約1年。僕がいてもいなくても、日本の家族,友人の間では同じく1年が経過している。暑さの和らいだ去年9月に出発し、季節は巡り巡り、今は7月。みんなにとっては1人の友人と1年間会えなかった、ということになりますが、僕にとっては何十人の友人と1年間会えなかった、多くの交友関係に空白期間があった、ということになります。みんながどんな反応するのだろう、まだまだ何かと弱かった出発前に比べて成長したのかどうなのか…。心配でもあり、楽しみでもあります。

 

 

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2.

ヒューストンをこれから旅立つ今の気持ちは、やっぱり「寂しい」。こんな僕でも、みんな仲良くしてくれて、家族のように温かく、そして辛いときも寄り添ってくれました。留学中の3月末に父を亡くし、精神的にも体力的にも限界状態を迎え、恥ずかしながら拒食症を発症してしまった5,6月。そんなときに支えてくれた素敵な仲間がいっぱいいた。こんなに素敵な人たちと交友関係を築けたこと、ずっとずっと誇りに思っていた。彼ら彼女らにもう会えない、受け入れがたい、辛い現実です。

 

なぜこんなに辛いか。残念ながら「留学先での出会い」っていうのはやっぱり一度きりになってしまうことが多いのです。同じくvisitingで来ている仲間たちやメディカルセンターで働く人たち、そしてRiceで学ぶ学部生PhD学生、Internationalな学生は数か月もしくは数年したら母国に帰りそれぞれの道を歩みます。「I hope to see you again!(また会える日を楽しみにしているよ!)」とみな最後にあいさつを交わすのですが、誰もが分かっています。これが最後の出会いということを。

 

年を重ねるにつれ、こういった “寂しい”といった気持ちを強く感じるようになってきた気がします。感情の変化かもしれません。他にも、何かに楽しさを感じること、苦しいことを目いっぱい苦しむこと、悲しいときはありえないほど悲しむこと、そういった感情をちょっぴり大げさに感じるようになってきました。特に、3か月前の悲しい出来事があって以来。その自分の中のちょっとした変化が僕はうれしいです。

 

なぜかというと、僕は「感情に素直な人」が人間的に好きだから。

「感情的な人」というと、ちょっぴり負の側面にフォーカスした表現ですが、そうではなく、『感情に素直な人』。
例えば、何か新しいことを始めようとしたときに「それ面白いね!!」って目をキラキラさせて言ってくれ、ワクワクを表現してくれる人。例えば、自分が本当に苦しんだり悲しんだりしているときに一緒に悲しんでくれる人。きっとそういった人たちが、周囲の人を惹きつけて、世の中にプラスの変化を与えていくのだと僕は思います。そんな素敵な人たちに少しでも近づくこと、これも人生の大きな目標です。

 

ここまで、留学生活で変わった「感情面での変化」を書いてきました。次は、アメリカに来るようになったきっかけなどをお話しできたらと思います。

 

 

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3.

アメリカにきた “きっかけ” をじっと考えたとき、幼いころにまでいきつきました。

 

幼いころから、自然や宇宙が好きで、「ぼく、将来は立派な研究者になるんだ!」って夢を見て、そうやって父や母に伝えていました。そして、小学校1年生のときの「自由研究」で賞を取って幼いながら自信になり、そこからずっとずっと研究者になることが夢…。研究の傍ら英語英語…そんな毎日。毎朝4時から4時間勉強するも、ただやっぱり不器用だったため、iBT8回、IELTSを2回も受けました。受験料計25万円。それでも基準点に達することなく交換留学受け入れが破棄。そんな中でRice大学は僕を受け入れてくれました(Riceは高い英語力を求めないこと,積極的に受け入れてくれる先生がいることが幸いしました)。オファーを送ったどこよりも最高の環境だと思っています。そしてトビタテも何とか合格(おそらく2期生で一番下だと思っています)。非常にありがたいことに、資金的な面での不安が消えました。

 

こうやって、きつかったこと失敗したこと書くのは、「あいつアメリカに行った、すげえ!」ってなると、心がくすぐったい気持ちになるから。至極あたりまえなことですが、僕は別に平凡な学生なのです。もし本当に“何かをかなえたい意志” があるのであれば、全身全霊、誰に何を言われようと突っ走れたら素敵だと思っていたから。平凡な自覚があるのであれば、誰にも負けない努力を重ね、そしてつかみきって帰れこれるような1年間を目指していました。でもまだまだ自分も大したことがない、それは自分が一番自覚しているので努力します。

 

ここまでして掴んだ留学生活ですが、その留学生活自体もやっぱり「修行」の意味合いも強かったと思います。何の実績もない、まだ学部生だった僕を受け入れてくれたRice大学は、世界最高峰のリサーチ大学。もちろん最初は何もできず、英語もよく分からずそれこそ「何しに来たんだろう」状態で未熟さをひしひしと感じる毎日でした。アメリカではプロジェクト単位で研究が進み、スピード感も凄まじいものがあります。進捗報告ミーティングだって週2回あり、初めはついていけないことがしばしば。研究の進め方としては、プロジェクト単位であることから常時誰かと連絡を密に取り合い、仕事を進めていく必要があります。熟練の技術を持つ周りのPhD学生にいつも助けられながらも、必死にもがき苦しみ、要領悪いながら朝から晩まで、時には朝から朝まで、測定を行いました。

 

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季節が巡り春になり、半年が過ぎました。そこそこ難しい測定も行えるようになるものの、学術論文クラスの面白い現象は見当たらない。イマイチインパクトに欠ける…。そして蒸し暑い夏が訪れ、8か月が過ぎたころ。新しいプロジェクトに手をかけて1か月でした。ふとした拍子にある実験に成功。追実験を重ねるにつれ、山のように新事実が明らかになりました。それは世界の誰も見たことのない現象でした。

 

……。。

 

ついにかなえることができました。

真面目に毎日論文を読み勉強しているので、この結果がどれだけインパクトを与えるかは修士1年生でまだまだ未熟な僕だけれど、少なからず分かっていたつもりです。そして教授の先生が大きな声を出して驚く姿を見て再認識しました。以降、死に物狂いで様々なアプローチを自分なりの方法・アイディアで実現して、失敗もあったものの当初の何十倍も面白い結果になったと思います。教授の先生もアップデートするたび驚くような不思議な結果でした。

 

扱っていたのはグラフェンという今流行りの物質。つまり非常にCompetitiveな分野なわけです。2004年にグラフェンの存在が明らかになり、十数年。以降、多くの研究者の方々が必死になって測定を行い、大方の物性は学術論文として世に発表されてきました。だからこそ、この測定結果は非常に重要な意味を持つはずです。偶然の見つけた結果ではあるのだけれども、これを見つけるためには数えきれないほどのトライアンドエラーがあって。だからこその発見であるから、1年間自分がやってきたことには絶対的な自信があります。まだ未発表の結果なのでこうやって、もやもやっとしたことしか書けないけれども、これからの数か月間理論の先生方との打ち合わせをし、執筆。そしてNatureやPRLなど、高IFを持つ学術誌にAcceptされた暁には、自信を持って「夢をかなえることができた」と言いたいと思います。インド、中国、アメリカ、日本の国際共同研究プロジェクト(こうやって書くと何だかかっこよく見えちゃいますね…笑)をこれから数ヶ月で、必ずや成功に導きます。今は不安の気持ちもあるけれど、夢をかなえた先にはどのような感情が待っているのだろうか。最初に感じる感情が“周囲への感謝” であればいいな。そう願っています。

 

 

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4.

10か月の留学生活を通じて、異文化に対する考え方もずいぶん変わってきました。いろんなバックグラウンド(例えばここでは,宗教,食生活,ワークスタイル,言語,としましょう)を持つ人たちと実際に研究プロジェクトをこなしたり、1つ屋根の下で生活したりする中で苦しいこともたくさんありました。例えば、時間にルーズさをひしひしと感じることがありました。メールへのリスポンス、生活スタイルが全く違ったり、そんなこともたくさん感じました。最初は「あれっ…?」って違和感に感じてストレスになることもありました。

 

でも途中で気づきました。

「自分がこうやって彼ら彼女らにカルチャーショックを感じてしまうということは、彼ら彼女らも自分に対して感じているよねきっと」

 

それまでは一方通行的な考え方ものだったのかもしれません。それ以来、異なるバックグラウンドからくる考え方の違い、生活,仕事スタイルの違いからストレスを感じることはなくなりむしろ楽しくなった気がします。

 

そして最終的には「異文化を異文化と感じなくなる」ここまでこれたらきっと素敵だなあっと思っていました。結局は同じ人間。英語を使えばコミュニケーションは可能。悲しむときは悲しみ、楽しいときは声を上げて一緒に笑う。誰か嬉しいことがあったらみんな自分のことのように喜ぶ。こういった、ちいさいけれど素敵な経験を、家族のような仲間たちと何度も積み重ねることで、””バックグラウンドの違いからくる壁””なんてないんだなと感じられるようになりました。もしかしたら、これが留学生活で得たものの中で一番大きく、大切で、今後一生大切にしていきたい感覚かもしれませんね…。これが僕らの学生の目指すべき『グローバル化』なのではないでしょうか。「世界が平和でありますように」って言ったら、「お花畑思考」とか揶揄されたりすることもあるのですが、強大な国家でも結局は1人1人の集合体。国家間の関係だってひも解いてみたら1人1人の関係の集合和。みんなが「異文化を異文化と感じなくなる」ようになったら争いごともなくなるんじゃないかな…僕はそう信じて今日も明日も世界のいろんな国の人たちと関係を築き続けるつもりです。

 

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5.

ここまで読んでいただきありがとうございました。

北太平洋上空。アラスカを越え、現在カムチャッカ半島上空にいます。あと1時間後には札幌上空を通過、そして経由地のソウルに着きます。

 

滞在最終日は本当に波乱の連続でした。

家の鍵をポケットの中に入れたままズボンを洗濯してしまい、ぶっ壊してしまいました。もちろん鍵も取り出せません。そしてなんと乾燥機にかけた洗濯物を取り出すことなく飛行機に乗ってしまいました。スーツケースにいれるのをすっかり忘れていました。残念ながら持ってきた洋服の半分を失なったことになります…笑。もう本当に自分らしいというかなんというか,…。初めてのひとり暮らし(正確にはルームシェアですが)をしてみて分かったのですが、ティッシュを洗濯機に入れたときの絶望はすさまじいものがありますね。だいたい2回(/月)くらいの頻度でティッシュを洗濯してしまっていたのですがこの癖はどうやら直りそうにないですね。。笑

 

さて、これから数か月はまだまだ大変なことがたくさんありそうです。

論文執筆は容易ではないですね…。こういった作業を日々行っている研究者の方々、本当に尊敬に値します。これからが勝負でもあります。大変ですが、でも今は研究の楽しさを目いっぱい感じています。これも、僕を受け入れてくださった先生方、家族、友人、応援してくれた北大の先生方、トビタテ事務局の方々、支援企業の方々のおかげ。こんな素敵な経験をさせていただき、心から感謝しております。

 

最後に僕が留学生活で撮ったベストショットたちを挙げてこの記事を終えたいと思います。

 

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